【シン・ゴジラ】牧教授の犯罪計画、ほか

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映画「シン・ゴジラ」雑感。作中、「放射線量分布」みたいなニュアンスでサーベイサーベイ言うのですが、これってそういう使い方する言葉なんでしょか? サーベイ(survey)は測定で、何の測定値か言わなきゃワカランように思うのですが(^_^;)

radiation dose distribution の survey data とかじゃないのかなぁ? 自衛隊の「攻撃」「爆撃」みたく、「放射線」は(刺激的な言葉だから?)言い換えたり省略するのが中央官庁のお作法なんだろか??

「サーベイ対象」は「ホールボディカウンター等で精密測定が必要(=要精密検査)」みたいな意味? 謎だ...。

(※空間線量測定に使う携帯放射線測定器を「サーベイメーター」と呼ぶそうです。つまり「サーベイメーターでの測定値」「サーベイメーターでの測定対象」という意味合いなんでしょう)

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    ネタバレ注意
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タバ作戦の10式戦車が対榴、つまりHEAT(対戦車榴弾)を撃ってるのは巨大不明生物「鎌倉さん(ゴジラ第4形態)」を「たかが動物」と侮ってたからで、先に「品川くん(ゴジラ第3形態)」と接触し交戦直前までいったコブラが射撃し、20ミリがピンポン玉みたいに弾かれると知ってれば弾庫に貫通力の高いAPFSDSを詰めてきただろうなぁと思うと些か残念な気持ちになります。

ゴジラ各形態のわかりやすい説明図

航空機関砲であるM61(攻撃ヘリに積まれてるのは派生のM197)にはまともな徹甲弾がなく、20ミリを弾くだけでは「異常な重装甲」と認識されなかった可能性はある。AGM-114のスーパーチャージHEAT弾頭も有効弾にならない時点で、かな。

一番近いAH-64D配備部隊は...三重か。これだとさすがに初動には間に合わないかな。いまの陸自TOWは大型弾頭のTOW2相当になってるはずだけど、タンデム弾頭なんだろか?(HEATで撃ち抜ける見込みは皆無だけど) そもそもタバ作戦に至ってもハイドラ70を吊ってる時点で「戦艦以上の重装甲」と想定していないことは自明(^_^;)

APFSDSだと、砲弾が爆発しないので絵はすげぇ地味になります(^_^;) ペネトレーターが侵徹できるかどうかは装甲=ゴジラ表皮の音速次第(背中にMOPが通ってるのでAPFSDSも入りそうではある)ですが、爆発しない→足元は若干火花と土煙が上がるくらいで、頭部に連続命中する重溜の派手な爆炎に対し、とても地味な絵になるハズ。

でも...ここで下手にダメージを与えて深刻な脅威と認識されちゃうと、休眠中の自動防御行動を地上目標に対しても取り始める可能性があるか。それは、後の駆除作戦に多大な影響が出る悪手かもしれない...。「電車も近寄れない」とかになると、歴史が、むしろ悪い方に変わりそう(^_^;)

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米国エネルギー省の嘱託として巨大不明生物を研究してた牧・元教授(岡本喜八)。彼が米国に遺した資料の

「構造レイヤーの意図的な空白」

を補填するもの"らしい"として米国から与えられた「折り紙」が、暗号解読とスパコン計算資源をじゃぶじゃぶ注ぎ込む解析の結果、ゴジラが究極生命体であることを保証する「G細胞の細胞膜」=錬金術の元を抑止する分子で、これを使って無毒化機構を殺しゴジラ内部から攻撃するってのがこの映画終盤のプロットなんですが、つまりこれを遺した牧教授も当然同様の検討をしてた→牧教授は最初から巨大不明生物の生殺与奪を握ってたことになります。

正体は細胞膜自体ではなく、細胞膜の活動を抑制する極限環境微生物の分子構造だったんです

水素や窒素等、陽子数が少ない物質を取り入れて、細胞膜を通し細胞内の元素を必要な分子に変換してしまう、ゴジラはその崩壊熱を利用した、熱核エネルギー変換生体器官を内蔵する混合栄養生物と推測出来る。

混合栄養生物=ゴジラは「通常の摂食」と「核動力」という2つの動力源を持っており、「核動力」のほうは

・錬金術(!)で元素を変換
・変換した元素のガンマ崩壊

というプロセスを経て得られたエネルギーを動力としている、ということらしい。

まぁ「混合」といいつつ、摂食によって得られるエネルギーなんてたかが知れてる→かつてはちまちま摂食してたかもしれないけど、いまや比率的に殆ど全ての動力を核動力から得てるハズで、ほぼ「独立栄養生物」と言う方が現状を正しく表してそうではある。

「核融合」ではなく錬金術で重元素に変換→「核分裂」動力というあたり、かなりマニアックな設定。ゴジラ=核分裂や核分裂生成物という既存イメージを、出来るだけ正確に継承しようとしてる、ともいえる。平成ゴジラはまま核燃料喰うんですが、昭和は(核実験に晒されたことはあるけど)食べないのに放射能云々というのに出来るだけ揃えたというべきか。

G細胞によって構成される「呉爾羅」は常識はずれの超生物ですが、その生体機能は特殊な(錬金術=賢者の石として動作する)細胞膜に大きく依存しており、事実上「核動力」を支える錬金術=細胞膜こそが生命線。今後みるみる進化して強力になるであろう新種生命体を生み出すに際し、その弱点を把握しておくのは実験として合理的ですが、その培養や進化促進が身命を賭しての攻撃計画だったとすると、些か妙な塩梅になる。

生物として育つにあたり、大型化や高出力化は「生物としての進化の方向性」がそっちならまぁ仕方ないかなとも思えます(いわゆる「恐竜的進化」が進化の袋小路だと恐竜自身が考えてたとは思えない)が、

・水中→陸上への進出
・都心への侵攻

は、自重保持と冷却という2大問題を抱えてまで行う必然性が薄く、実際に頑張って屹立し一時品川くん(ゴジラ第3形態)化した蒲田くんは、直後に「こりゃダメだ(早すぎたんだ)」と撤退→その後巨大蒲田くんではなく、基本構造まで弄った鎌倉さん化までしてわざわざ出直してくる合理的理由を思いつけない。

つまりそれは、生物進化の必然とか合理性の帰結ではなく

「陸上の人口密集地(?)へ向かうようプログラムされた生物(兵器)」

と考えるのが自然かな、と。その場合、牧教授は

・首都を破壊する武器=ゴジラ
・自らの武器=怪獣の弱点を示す「折り紙」

の両方を用意して彼の「計画」を開始したことになり、日本国の首都を破壊したかったのか、破壊を阻止して欲しかったのか、良くわからない。彼の「好きにした」は、最終的に何を目的とし、何を「勝利条件」と設定したものだったのか。

勿論最初から「勝利」を目指してなかった可能性も否定できない。真船博士の当初の目的は「復讐」だったけど、学会を恨んでいても滅ぼそうとまではしなかった。彼の目的は「嫌がらせ」だった。「学会を震え上がらせることが勝利条件だった」と言うべきか。それで済まなくなったのは娘とブラックホールなんちゃら星人のせい(^_^;)

「牧教授は放射性物質と人類を憎んでいた」

とかブンヤさんに言われてますが、それは作戦実行直前の牧教授本人から直接聞き取った内容ではない。彼の真意は誰にもわからない。

つーか、「元々のゴジラの住処」は何処なんですかね? 「放射性廃棄物が大量廃棄されてた海域」らしいですが、米国のみが把握し研究してたことからあまりかの国の領域から遠く離れた場所とも思えず、そうなると「ゴジラをわざわざ遠隔の住処から東京湾まで誘導してから作戦を開始した」という話になりそうなんですが。それとも、最初から故郷の(どうやら小笠原にあるらしい)大戸島の近くだったのか。

「また爺様のゴジラがはじまった(笑)」

「牧・元教授はこの事態を予測していた気がする。彼は荒ぶる神の力を解放させて試したかったのかもしれない。人間を、この国を、日本人を。核兵器の使用も含めて、どうするのか。好きにしてみろ、と」

「この事態」とは、「神にも等しい超生物」に至った巨大不明生物への対策が

・外部からの熱核攻撃
・内部からの細胞膜攻撃

の二択情況に至る、ということで、作中では「判断を強要すること」自体を目標としたのではないか、みたいなニュアンスで語られるんだけど、正直良くわからない。「判断した行動が招くであろう結果」まで見据えるほうが自然だけど、牧教授が犯罪実施に至った直接的な動機が不明で、目的も見当がつかない。

「あえて大量にヒントを残し謎解きを迫った帆場暎一と同様のメッセージ型犯罪」

であり、牧教授に「犯罪に手を染めてでもなにか激しく申し述べたいこと」が有ったことは確実と思われるけど、帆場暎一はわざわざ

「後の捜査官に思考経緯(≒犯罪動機)が類推しやすいよう」

行動しているものの制限時間内に謎が解かれ、有効な対策を打てるほど能力が高いとは考えてなかった(から勝利を確信して死んだ)ハズで、暗号化してるとは言え「G細胞を殺せる情報」そのものを遺した牧教授のやり方は、帆場暎一が攻撃手段=ウイルスのソースコードを見せてるのに近く、いくらなんでもやり過ぎのように思われるんだけど...。

廃棄物13号事件との類似性は本筋ではないので、今回は指摘するのみで追わない。ストーリーのモチーフが同じ「フランケンシュタイン型」なので、似たような経緯を辿るのは必然でも有ると思う。

この辺は牧教授の「人類観」に直接関わる問題でもある。

作中に牧教授を直接知る人は1人も登場せず、教授は後に自らの仕掛けた謎を解くであろう人物を想定も特定も出来ないまま死んだ→彼が想定した「自分以外の人類」「米国」「日本人」は、どういう能力を持ち、自らが与えた暗号に対してどういう対応を行うと考えていたのか...。

牧教授が進化の過程であえて(日本国の首都に)熱核攻撃を呼び込み、復活の日'84ゴジラを狙ってた可能性は、正直捨てきれない。

核爆発による重粒子線照射で、地球上の脊椎生物をほぼ死滅させたMM-88ウイルスは性質が劇的に変わり、スーパーXに嬲られ死にかけだった'84ゴジラは元気に復活した。そういう変化狙い。核爆発を個人で起こすのは難しいけど、超生命を使った攻撃計画の結果として想定しやすい状況でもある。

('84ゴジラの東都日報記者「牧吾郎(田中健)」の後身が牧教授で、沢口靖子が放射線障害で死んだからシンゴジで攻撃した説は思いついたヒトに嫉妬するくらい面白いと思います(笑)が、かの世界では過去に一度もゴジラが出現しておらず因果はつながりません:^^;)

熱核爆発を誘発するところまでが計画。つまり牧教授の目的は東京の自殺的熱核焼灼、または牧教授は重粒子線照射がG細胞を破滅的に変化させると知っていた説。対ゴジラ計画を立案した巨災対は核攻撃に対するシミュレーションを一切行っておらず、間准教授(塚本晋也)以外は米国防省ですら漠然と「超高温で焼灼されるだろう」程度しか想定してない→「予想外の事態が発生しない」とは誰にも言えない。

でも、その場合も牧教授がわざわざ暗号化して遺した「G細胞膜の弱点」は特に必要なさそうで、つまり「折り紙」は牧教授の悪意ではなく、善意によって遺されてたことになる。それはそれでアリな気もする(牧教授の最後の良心説)けど、教授の悪意を最大に見積もるなら、

暗号解読は間に合わない → ゴジラの破滅的変化 → 滅亡の途上にある人類が遅まきながら暗号解読 → 畜生嵌められた我過てりと地団駄を踏みつつ滅亡

みたいなシナリオ(牧教授の死体蹴り説)も無いではない...か。

G細胞を研究してた牧教授は、元素変換とか錬金術じみた動作(笑)をするG細胞膜に干渉した場合、G細胞がどう反応し変化するかという実験かシミュレーションを当然事前に行い、なにが起こるか知っていたと考えるのが自然。というか、急速進化と変態で問題を解決する能力を持つG細胞が、内部機構への攻撃を漫然と受容してなにも反応を起こさないと考えるほうが不自然。

そもそも、ゴジラ第4形態→第5形態というか「尻尾の変形」は、どの時点で始まっていたのか。

万全の陸上適合で上陸し、その強固な外皮で自衛隊の攻撃をはねのけたものの、米重爆から想定外の水平爆撃→外皮射貫→体内爆発という大打撃を喰らい、ただ一撃で「普通は死ぬ」くらい体組織を破壊されたゴジラ第4形態「鎌倉さん」。なんとか追撃を逃れようと懸命の抵抗を見せ、アキラ化イヤボーンで迎撃しますが、周囲を焼き払ったところであえなくガス欠→長期休眠を余儀なくされるところまで追い詰められます。

新幹線爆弾から始まる猛攻「ヤシオリ作戦」でその休眠すら強制終了させられたゴジラは、単一巨大化の招いた危機的状況(圧迫固定&冷却困難)解消のため、急ぎ尻尾の先から群体(レギオン)化しようとしてた訳ですが...。

ゴジラ第5形態=単一巨大化の流れに完全逆行する「群体化」。検体サンプルを用いた進化解析シミュレーションの結果「群体化する可能性」は指摘されており、放置すればいずれ其処に至る→バラけると始末に負えず世界が滅びる→その前に熱核焼灼するしかない、という話になった訳ですが、放っておかない場合にその流れがどうなるかは解っていない。

陸上を這いずるのでは視界が狭く障害物の超越が困難なので足を生やして屹立し、MOPで背中をぶち抜かれないよう砲台化した等、ゴジラの形態や生態の変化は「問題への対処」(=受動的な「反応」)として始まることが多い。そして、最終変態(になっちゃった)がどの時点で始まったかは描写されていない。「既に始まっていたが間に合わなかった」という描写が有るだけ。

水中形態のまま強引に上陸してきたゴジラ第2形態=鎌田くんは建造物で視線を遮蔽されお先真っ暗だし、ただ前進するにもいちいち駐車車両を跳ね飛ばして進まねばならない等相当にストレスを感じてたはずですが、それでも2時間程度とされる上陸時間の半分以上を第2形態のまま過ごしました。逆に言うと、ゴジラはその程度のストレスを受けると変態してやり過ごそうとし始める、とも言える。

ゴジラの形態変化は脅威に対応する場合特に急速に進行する(あの爆弾をもう1発食らったら死ぬ!)ので、直前に浴びた攻撃、すなわち

・転倒させ固定するための圧迫
・冷却不全を促す血液凝固

のどちらかに反応した可能性はあります。可能性としては後者が大きい。核動力が生命線であるゴジラにとり、主動力に干渉されることはより致命的なので(実際これがゴジラの致命傷となる)

その場合、血液凝固剤等の「毒物投入」を可能とする情報を「折り紙」暗号で遺した牧教授は、ゴジラ内部への攻撃がなにを引き起こすか知ってた可能性が高い。日本人が良かれと思って全力で実施した「牧教授の知見を流用した巨体冷却の循環阻害攻撃」は、実は「ゴジラをより厄介で始末に負えない存在に進化させる罠」だったという牧教授のブービートラップ説。

この辺は、牧教授が「謎は解ける」と考えていたか「謎は解けない」と考えてたかで分岐する。通常攻撃が通じないところまで進化した時点で熱核攻撃は自然に浮上してくる選択肢だけど、暗号解読は、期限内に解く能力を持つ人間の手に渡るか渡らないかで勝負が分かれる。これは人間に可能な予測や推理の範囲を越えており、哲学に近い。牧教授の判断は「牧教授から見た世界」に左右される。

教授は「日本」を、「世界」を、どうしたかったんだろう? 事件後「不可逆に変化」することは知ってたはずだけど、どう「変化」することを望んでたのか。どこまで「破壊」するつもりだったのか。「滅亡」まで追いやるつもりだったのか。

彼が選び育てて投入した武器=ゴジラはほぼ狙い通りに動作し、観客の目では「破壊」に関して目的を概ね達成しているように思えます...が、それが本当に彼の望んだ結末だったかはわからない。牧教授の目標設定が不明なので、ただ彼が、もはや自ら仕掛けた「攻撃」の結末を見る必要はないと判断したことしかわからない。

レイバーOS(に潜むウイルスプログラム)を武器とした帆場暎一は「関東一円は壊滅。多数の日本人を殺し日本の政治経済中枢を破壊した」と確信し、それが彼の勝利条件をクリアしてたから満足して死んだ。牧教授の武器はそれよりさらに強力に「進化」する可能性を秘めており、更に(人類や日本人にとって)厄介な勝利条件を設定することも可能なんだけど...。

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巨災対が「ゴジラの冷却を阻害すれば急速冷却して原子炉を緊急停止させる」と確信してるのは、ゴジラの熱平衡や熱収支が特異であり異常だと既に掴んでるから。

普通に考えると、原子炉の冷却を阻害した場合

「冷却されなくなった原子炉は際限なく温度が上がり、制御不能に陥って最終的に炉そのものが溶融する」

となります。いわゆる炉心溶融(メルトダウン)。

バーニングゴジラのときは実際そう判断されており、ゴジラ内の核反応を制御できる目処が立つまで自衛隊は手出ししてないし、その後も炉心の露出を避けたい→デストロイアをけしかけ、分子間結合を緩め万物を破壊するという謎物質「ミクロオキシゲン」で原子炉ごとゴジラを消し去ろうと計画した。

東京湾アクアトンネル直上でシンゴジ(第1形態)が活動し始めた際に瞬間的な海水沸騰=水蒸気爆発が起こっており、当時「かなり高温の器官が海水に暴露」してた→鎌田くん(第2形態)の呑川遡上時に高温水蒸気等の描写は見当たらない→東京を焼き払った鎌倉さん(第4形態)が出力を上げると赤熱→出力低下で赤熱が収まるという感じの描写がなされており、ゴジラ循環系の温度や露出具合が出力と放熱のバランスで刻々変化してるのは間違いない。

海水を沸騰させ、高温時には赤熱するまで加熱出来ることから、ゴジラの冷却系は少なくとも軽水系ではない。鎌田くん(第2形態)がべちゃっとこぼしたお汁(笑)がアスファルトを溶かしたりもうもうと煙を上げる的な描写もなく、水冷が主だったであろう鎌田くんは冷却能力が発熱を上回る→屹立し、背びれを大きく展開して空冷化し始めた品川くん(第3形態)の時点で冷却系が負け始めた(=出力が大幅に上がった?)→より大型の鎌倉さん(第4形態)化を以て陸上適合が終了、という流れ。

そういえば、直後に冷却不良で撤退することになる品川くんは、鎌田くんより赤みを増してたような。米重爆に背中をぶち抜かれ大出血した鎌倉さんの足元はどうなってただろう? 夜間&直後に大炎上するのでよくわからんけど、冷却材が飛び散って被ったあたりは直後に発火して火災になるくらい高温だったのか。300℃なら木が、400℃を超えると鉄でも火を吹く可能性がある。

ちなみに鉄(放射率1弱)が赤熱して見えるのは800℃前後で、1000℃を超えると白熱して見える。全力発揮時に発光してるように見えるゴジラ血液の融点・沸点・比重・放射率等の物理特性がまったくわからないので計算のしようがないけど、これを「熱放射の波長スペクトルが可視光域に入ってる」描写と考えるなら、それなりの(絶対)温度に上昇してる可能性が高い。

ビオゴジを抗核バクテリアで攻撃した際ゴジラの体温が思いのほか低く、抗核バクテリアの増殖が進まず効果を発揮しないという描写はあった。同じ原子力巨大生物では有るけど、細胞単位で対応するビオゴジと器官で対応するシンゴジは基本的な動作原理が違うんだろう。抗核バクテリアを作れるビオゴジ細胞は、細胞内小器官として各細胞に各々マイクロ原子炉を持ってる...のか?

シンゴジは細胞膜で必要核種を生成し、身体の何処かに有る器官(生体原子炉)で集中的にガンマ崩壊→循環器を兼ねる冷却系が熱変換→身体各所に熱移送→筋収縮系を駆動、という仕掛けで、出力上昇→崩壊熱増大→冷却系赤熱、ということになるらしい。熱エネルギーを筋駆動に直接変換するのは難しそう→たぶんなにか(化学物質か物理的遷移か)経由で巨体を動かす動力に変換される...んだろう。

この「なにか」は、結構大変な代物(^_^;)

高温の物体が熱量を失って冷えていくのは物理的に当然だけど、シンゴジはこの「熱移動」が異常に高速かつ激烈。「熱」とは物質内の原子や分子が持つ運動エネルギーで、循環系冷却材(=ゴジラ血液)が高温側として身体各所にガンマ崩壊によって生じた「熱」を運び、筋駆動系が低温側として温度差と熱伝導率に応じこの「熱」を受け取るんだけど、シンゴジはここの「熱移動」を、極めて高い速度と規模で行えるらしい。「吸熱」というか「分子停止」といっていいレベルで。

間准教授は「放冷(=空冷)は補助」と言い切っており、ゴジラは発生熱量と放射熱量が釣り合ってない→「移動先で熱を"吸い出して"他エネルギーに変換」と考えているらしい。普通循環系とか冷却系は熱を移動させ分散し最終的に「放出」するのを助けるだけの仕事なんだけど、巨災対はゴジラの熱収支を計算し「そうではない」と結論づけたっぽい。ゴジラの冷却器官(=G細胞?)は熱力学の基本法則を凌駕し、ポテンシャルやエントロピーを(一部?)無視して振る舞う、と確信している。

ここから巨災対はシンゴジを「生体原子炉による発熱」と「冷却器官(=G細胞?)による冷却」がバランスしている間だけ存在できる生物と考え、このバランスを崩すことで攻略できる...と言ってるのが「矢口プラン」なのか。なんか、ようやく得心できるような結論が出た(笑)

そう考えると、循環を阻害され熱が十分に回ってこなくなったシンゴジ末端部が一部凍結→生体原子炉の冷却が困難となり温度が上昇→内臓が溶融しそうになり生体原子炉を止める→発熱が止まり冷却機能のみが動き続ける→爆発的に温度が低下して凍結、という終盤の流れが納得できます。そーか、G細胞膜が錬金術とは思ってたけど、そこにマクスウェルの悪魔まで居たとは思わなんだ。まぁ「瞬間凍結」なんで、普通の熱移動ではないわな。

というか、これを見て「瞬間凍結するとはこういうこと。即判れ」というのは、結構難易度高いのでは?(^_^;)

この、生物として相当"危うい"ゴジラの熱平衡は、一体どの段階で成立したのか。ゴジラの家系が先祖代々放射性廃棄物食ってたとも思えず、かの1個体がたまたま放射性廃棄物食って、それに対応する課程で生体原子炉と冷却機構を得た...くらいしか現実味のある解釈がないんですが、さすがにこんなに凝った機構を偶然身に付けちゃいましたーと言われても、胡散臭い感じが拭えない。そもそも(怪獣映画観てるとそのへんの感覚が麻痺してくるけど:^^;)自然生物は単体で進化したりしない。

元々のゴジラが持ってたのは放射性廃棄物を摂取して生きるのに必要な「元素変換細胞膜」だけで、混合栄養を供給して大出力を約束する「生体原子炉」「冷却G細胞」等は、遺伝子書き換えで後天的に生成したんじゃなかろうか? 同じ元素変換でも、元々は重元素→軽元素という「重元素の無毒化」が大きかったのでは? 軽元素→重元素という変換は要するに「常温核融合」であり、利得は大きいけど敷居も高い。

これらの「不自然な変化」を説明できる要素は「牧教授」しか存在しない。ゴジラという「兵器生物」は「進化の必然」ではないし、異常な成長や進化、火炎放射や光線砲台化等、「自然に獲得できる特質」として不自然すぎる特徴を複数持つ。

となれば、氏はかの生物を「日本の首都(陸地)を攻撃させる」機能生物とするため、東京湾で

・生体原子炉と冷却器官を有する
・急速に成長し増殖し進化する
・上陸して人口密集地を攻撃したくなる
・高出力を利用して様々な攻撃手段を持つ
・受けた攻撃に進化して対応する
・最終的にバラけて世界に広がる

設計の遺伝子を書き込んで変化させた...?

こうした「機能生物(兵器)」という概念はトップをねらえ!を想起させます。かの「宇宙怪獣」も、生物と言いながら半ば以上「兵器」として存在していたし、利己的な行動を取らず、本能的にひたすら「目標」を攻撃し続けるという特性も重なる。エヴァンゲリオンの「使徒」もそうか。

この説だと、シンゴジは映画が始まる直前までDOEの資料どおりの(悪食)生物で、開幕直前の東京湾で「資料を超えた状態」=兵器化した、ということになる。件の「水蒸気爆発」はいきなり体内に生成された生体原子炉の高熱にのたうち、海水に暴露させて冷やしてる状態。で、徐々に対応する「循環器」「冷却器官(筋駆動系)」を発達させ、熱平衡になると同時に高出力を得られるようになったのが「活動が沈静化してきた」報告期。この出力を使って巨体(尻尾)を動かし、陸地へ向かって移動を始める。

これ、ゴジラの立場だと正直「エライ災難」としか言いようがなく、確かにこれだけ好き放題やらかせば牧教授は「好きにした」と言うだろうなぁというとんでもない内容です(-_-;) ゴジラの生態や行動は生物離れしている→不自然な部分は全て牧教授が予め設計して実装してたという牧教授の完全犯罪説。

ただ、この場合も牧教授が「折り紙」を遺す理由がわからない。

自分の武器が自らの想像以上に強力になりそう→奇襲を受ける人類側にハンデを与えて多少は抵抗できる可能性を残してやった説、というのもありそうな感じではある。この場合の牧教授に「人類への善意」とは言いにくく「上から目線で傲慢」って感じだけど、「好きにしろ」という台詞はそもそも傲慢でありあまり違和感もない。

牧教授がただ憎い人類を滅ぼすつもり(神の代理として裁きの鉄槌を下す系)だったら「折り紙」とか遺さないし、遺言は「苦しんで死ね」になるよね(-_-;) 「チャンスはやる。やれるだけやってみろ」と上から見下してるとすると状況と適合する部分が多いように感じ、仮説として「それっぽい」。

教授はゴジラの攻撃の前に退場しており、「勝利条件達成確実」と考えたか、「自らが生きていては達成できない」と考えた可能性が高い。自殺はいつでも可能で、計画開始直後に慌てて死ぬ理由としてはこの2つが「それっぽい」。「廃棄物13号事件」を思い出させる状況だけど、その場合も「折り紙」の意図がわからない。「芹沢博士がオキシジェン・デストロイヤーの製法を残してゴジラ攻撃に向かう」ような行為は論理が破綻している。

間准教授の危惧してたように「ゴジラの熱核焼灼は不可能」と牧教授も判断してたとすると、他の選択肢もあったのにあえて核攻撃を選択→

「m9(^Д^)プギャーwwwwww くやしいのうwww」

という熱核兵器の使用や過信を嘲笑するつもりだった説とかもありえそうな気がしてきた。これでも「好きにしろ」になるかもしれない。罠で意地悪な(見方によっては「幼稚な」)行為だけど、自らが生きてると「正解」を教えてしまう可能性→死人に口なしという選択は、確かにあり得る(-_-;)

第5形態は人間の要素を含む→「ゴジラにヒト(もしくは「自ら」)の遺伝情報を植え付けて云々(許されざるいのち=合成怪獣レオゴン説)」の場合も、必要な情報をRNA転写して埋め込めばいいだけで、自らを始末する必要はない。そもそもゴジラは不自然な人工的要素を多く持つ生物で、遺伝子をいじってないってことはありえない→遺伝子に書き込むとなれば情報が多少増えようが減ろうが大した違いは無い。

時々誤解してるヒトがいるけど、生物に捕食されても普通は消化されて栄養になるだけで、食物に含まれる遺伝情報を取り込んで変化したりはしない(^_^;) 遺伝子は遺伝子を書き換える方法でしか書き換わらない。靴をきれいに揃えて居なくなった牧教授がゴジラに捕食される最期を選んだ可能性は確かにある(それが感傷なのか、死体を遺さないことを重視したかはわからない)けど、それは遺伝子書き換えと多分関係ない。

「東京湾を無人で漂流」さえしていなければ、初期段階で栄光丸(笑)が海保に目をつけられる理由がない。警視庁が動き始めるのは米国が危機を認識し日本政府に協力を要請してからで、それはすなわちゴジラの攻撃が行われたあと→この段階に至るまで船上で生活し続けることはまったく難しくない。自分の眼鏡や折鶴を日本人に公開するタイミングが少し後ろにずれるだけ。ゴジラの進化が適当な段階に進むまでぷかぷか浮いてれば、自ら設計した遺伝子が発展し適応した結果を自分の目で見られた。

つーか、ゴジラ第4形態の直立2足歩行はぶっちゃけ内部に中島春雄の骨格を持つ(笑)からであり、そこから群体=小サイズで外部のきぐるみ部分を取り除いた骨格を作成した場合、4足歩行のトカゲ類よりも2足のヒト的な意匠を多く持つ、エイリアン的な骨格構成になるのは必然のようにも思える。

ペンギンの脚は短く見えるけど、骨格で見ると意外とそうでもない。

本編終了後に理研ほかで行われたであろう実験や検証で、G細胞の無限増殖や生物災害事故が起こってないことを、ただ祈る(^_^;) 一応事前にP3施設縛りはしてたけど荒っぽい緊急措置であったことは全く否めず、白神博士はこともあろうに一般家屋でG細胞培養を行い、産業スパイの妨害もあって培養株の逃亡を許し、ビオランテを世に出してしまったので...。

白神博士の倫理観は半ば以上壊れて(^^;いるうえ無責任な行為を平然と行って恥じることもなく、彼と同じようなタイプの(マッド)研究者が世界のどこかに混じってると、人類はかなりやばくなる。

既に東京は焼け野原で、G細胞の破壊力と知見は世界中に拡散済み→もはや、「誰かが悪意で再現を試みないと良いなぁ」くらいしか言えることはない。もしくは、ゴジラ再現よりも特効薬が先に発明されることを期待、か(牧教授の狙いは追い詰められた日本政府によるG細胞情報の大拡散=米国情報独占の阻害。アレが最後のゴジラとは思えない説。小山田真希

「マキちゃぁん、世の中には、恐ろしければ恐ろしいほど売れるものがあるのよ」

G細胞を使った攻撃は成功すれば小さなコストで大きな戦果を挙げられることが既に証明されており、非対称戦を戦おうとする弱小な個人や団体が飛びつくことは避けられない。その結果世界が滅ぶかもしれないけど、「持たざる」攻撃者は往々にしてそういうことを気に止めない(+_+)

アンブレラ社の想定する戦争」の行き着く先は極めて破滅的だけど、そのことと「彼らが販売する商品」(=特殊兵器)の売上げにはあまり相関がない。とても難儀な話だけど、制御を喪失するリスクよりも「使い捨てできる兵隊」の強度や利便性を評価する顧客のほうが多い。

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「この世界には円谷英二が居らず怪獣の概念がない」

...うーむ。これって円谷1人で説明できるんやろか? 戦前の「ロスト・ワールド」「キングコング」が存在し、戦後「原子怪獣現わる」に続く

「放射能で変異した巨大生物映画」

が変わらない場合、巨大生物=「怪獣」という呼称や概念はあまり変わらない気も。

「円谷特殊技術研究所」

が存在しなくても、50年代の日本特殊撮影はそれなりに発展したのでは?

そもそも端緒たるゴジラ('54)のキーマンは田中友幸(^_^;) 怪奇小説か冒険小説のヒトがネタ出して、東宝の誰か(中野昭慶?)が戦記物のミニチュア技術で撮った気がする。その場合は怪獣のテレビ進出も、60年代の怪獣ブームも起こらない可能性はある。

大伴昌司は円谷と組まなくても、他の誰かと組んで「怪獣博士」になっただろうか? 円谷一とはあまり折り合いが良くなかったらしいけど。そもそも皮肉屋のSF作家なんかと相性が良いのは、同じくらいひねくれたヒトだけだし(^_^;)

ハリーハウゼンも居ない」場合、ミニチュア撮影は発達しても「巨大生物映画」は撮りにくい...か? しかし、「放射線による突然変異」とホラー文法が合わさると「怪物」の登場は半ば必然で、累積して数が増えればBEASTの域に収まらないキャラクターが出てくるだろう。

本邦においても怪人二十面相は戦前から存在し、月光仮面は輸入アメコミヒーロードラマの摸倣として作られ、構造に「(覆面の)怪人」を内包する。お面だけでバリエーションを付けるのは限界があり、差別化の方法論としてミニチュア+シルエットからいじれる非人型きぐるみという流れは必然のようにも思える。

サンダーバード('65)後、米国の宇宙大作戦と並行する国産地球防衛軍もののTVドラマが(円谷抜きで)出来るとき、対立構図や敵がどうなるかは手塚石森らのトキワ荘組が、どこにどう請われてどういうアイディアを出し、どういう順番で採用されるかに左右されそう。

それ以前は小松崎茂らの色が濃いけど、60年代の日本SF系ビジュアルはトキワ荘組に負うところが大きい。そのあとは...作品そのものの流れよりもマーチャンダイズの勝ち負け、具体的には村上克司あたりの動向が鍵になりそうな気がする。

「おもちゃが先かテレビが先か」は難しいところだけど、どこかで怪獣(という名前じゃないかもしれない)ブームが起こるとすれば、手で触れるおもちゃが先行しそう。それはつまり「なにを作るか」よりも「どう作るか」が大きいということで、おもちゃメーカーがそれなりのサイズやクオリティの商品を、ボリュームを期待できる価格帯にタイミング良く投入できるかどうか、で勝負が分かれそう。

サンダーバード系の商品と競合しこれを駆逐するのはなかなか大変そうだけど、市場がそればかりに寡占されると決まってるわけでもなく、対象年齢を低く出来る強みを上手く活かせばそれなりの市場規模にできる...かもしれない。マルサンタカトクがその世界でどう勃興しどこまで粘れるかと妄想するのは、ちょっと楽しい(^^;;