ドリフターズの武装

いま一番面白い漫画の一つであると断言出来る平野耕太「ドリフターズ」。豊田有恒「スペースオペラ大戦争」の系譜に連なる作品だと思いますが、伝奇もの要素や歴史ヲタ狂喜の小ネタてんこ盛りで、いまノリに乗ってます。

アワーズ買ってるヒトは知ってると思いますが、魔術vs刀槍弓の戦いになると思われてた2巻終了後の戦闘は、いきなりの重火力を以てあっさり決着しました。

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この「前提条件がいきなり覆る」構成とか、「万物は必ず滅びる」とここで言わせちゃうとことか、ヒラコー氏はやっぱ凄い。

ということで、銃弾がカンバンになるまでの一瞬だけ「ワイルドバンチ強盗団無双」(笑)っぽくなった訳ですが、てっきり西部劇キャラとばかり思ってた彼らの武装状態がちと気になったので、脳内整理のため、西部劇関連の事柄を時系列順に並べてみました。

・コルトM1848(戦士の銃の元ネタ。前装)
・ゴールドラッシュ 1849年
・S&W No.1(竜馬も持ってた金属薬莢リボルバー) 1857年
・ガトリング砲 1862年
・南北戦争 1861-1865年
・ダイナマイトの発明 1866年
・マキシム機関銃 1884年
・無煙火薬の発明 1886年
・フロンティアの消滅 1890年
・コルダイトの発明 1891年
・ワイルドバンチ強盗団 1900年前後

西部開拓時代の幕開けが19世紀半ば。金属薬莢銃の登場はこれに前後しており、その後の南北戦争で主力となったミニエーやエンフィールド小銃は前装銃だった訳ですが、時系列を見ると副武装の拳銃は既に金属薬莢の後装に変わりつつあった模様。

無煙ガンパウダー(発射薬。銃弾を押し出すための火薬)の代名詞コルダイト(ニトログリセリン+ニトロセルロースのダブルベース火薬)の登場は1890年台なので、つまりコレ以前の銃器は前装/後装に関らず、黒色火薬を使って撃ってることになります。

うわ〜、薬莢よりも無煙火薬のほうが30年も後なのね(*_*)

マキシム機関銃は黒色火薬弾薬を布ベルトで送って作動してたそうですが、これを撃てば火点は陰陰たる砲煙に被われ、それはそれはすごい事になったでしょう(^_^;) この時期の英国の戦争と言うと…マフディー戦争と第1次ボーア戦争か。

たぶんどちらも映画化とかされてないと思われ、ビジュアルイメージが薄かった。機関銃の防御運用は旅順攻囲戦、いわゆる映画「二〇三高地」で描かれたものが嚆矢と思い込んでたわけですが、英国ではその6年前にやってたみたい。

オムダーマンの戦い [wikipedia]

ワイルドバンチ強盗団は、思ってたよりずっと後の時代の人でした。南北戦争後に生まれて、もう西部劇とは呼べないくらい後のほうに活動してます。日本の歴史で言うとご維新を遥かに過ぎ、日清戦争から日露戦争前、という感じ。

ペキンパーの映画「ワイルドバンチ」は舞台が更にその後の時期に設定されているので、「時代の波に取り残された」と言われても仕方ないのかもしれない。←今ごろになってようやく気付いたらしい(^^;;

強盗団が個人レベルでえらい重武装出来てるのは、古い南北戦争時代の放出品のお陰なんでしょか? 30年前の銃ってことになるけど、ガトリング砲はハンドルを手で回すだけの構造なんで、修理すればなんとかならないこともないのか??

まぁ、とんてんかんてん鍛冶仕事で修理しなくても、メーカーとか軍の武器庫とかからかっぱらってくれば新造銃も入手出来なくはないのか。強盗団なんでなんでもありだし。

ガトリング砲用の銃弾といえば.58 Gatling(金属薬莢/リムファイア)と思われますが、つまり0.58inch=φ15mmもある巨大銃弾です。幾ら初速が遅くてもずんぐりの短寸銃弾でも、防弾装甲無し/近距離でこれを食らっちゃ堪りません。(黒色火薬は燃焼が早すぎ、銃弾の初速が上がらないため銃弾のエネルギーを上げるためには大口径化するしかない)

そうした圧倒的火力を発揮出来るのは「弾丸が有る間」限定だけど(^_^;)

ドリフターズでは開幕当初から織田信長により黒色火薬の製造について繰り返し言及されて来た訳ですが、信長はマッチロック(火縄銃)時代のヒトなので、雷汞やそれを使用するパーカッションキャップ(雷管)の存在について知りません。

まぁ連発銃に使用される金属薬莢の整形には、雷管よりも金属プレス技術の積み重ねのほうがものを言うと思われる訳ですが。銃器製造に求められる切削加工よりも、真鍮リムファイヤ薬莢のプレス整形のほうが、多分もう一段か二段難易度が高い。

プレス部品は、加工する元となる金型をきちんと(場所によってはミクロン単位の精度で)作れなきゃ作れないから。薬莢に要求される精度の高い絞り加工は、金属加工としてはかなり難易度が高い。

例えば「皇国の守護者(佐藤大輔)」では、既に蒸気動力機関が普及した後で機力切削になっており、戦争中かなりスムーズにマズルローダーから後装ライフル銃(単発。非薬莢式。たぶんファーガソンライフルに近い構造と思われる)へと移行出来た訳ですが、マッチロック以前から金属薬莢連発銃への敷居は、ぶっちゃけかなり高い。

まだ見ぬドワーフ族が、そうした技術を既に持っているかどうか…。実は薬莢の底だけ金属で削り出して火薬と銃弾に紙を巻く手もあるんだけど、本格的な連発銃には弾の精度が足りないかもしれない。

手動連発銃なら、装填した銃弾が不発になってもツッコミ等でジャムっても、棹桿を動かせば大体何とかなるのでそれほど神経質に気にしなくて良さそうな気もする…けど、自動銃、特に炸薬の入った砲弾を使う奴となるとそうもいかない。

詳しくは戦場まんが「爆裂弾道交差点(松本零士)」あたりを参照。筒内爆発とか起こしたら、菅野デストロイヤーにめっちゃ噛みつかれる(^_^;)

高度工業製品を作り維持するためには高精度な工作機械が必要で、冶金技術等を含めた「社会の総合力」を問われる部分がありますからなぁ。電力が得られなければ軽金属の生成は難しく、電気炉もアーク溶接もないので作れるものがかなり限られる。

ちなみに日本製のまともなボルトアクション連発銃(三十年式歩兵銃)が出てくるのは1897年で、日清戦争間に合ってません。無煙火薬金属薬莢連発銃自体はその8年前に出来てたけど、非常に不評だった(^_^;)

どことなく「ゼロの使い魔」っぽい(笑)菅野デストロイヤーの紫電改(N1K2)補修に限っても…アルミニウム合金製の機体やちょお繊細な誉発動機(NK9H)には、科学技術的な正統アプローチでは、もはや手をつけられないような(-_-;)

ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです @ ウィキ ←違う(^^;;

かの機体は失踪前の防空戦闘で筒内爆発を起こし機銃を1つ失っているけど、あと3つ、非常に強力なエリコンFFL20mm機関砲(正確には九九式二〇粍二号機銃。飛龍に残っているかもしれない初期型零戦用の20mm砲弾とは互換性が無い)と多少の砲弾を持っております。

まぁ機体から機銃を下ろして使うなら、飛龍の防空武装を外して使う方が強いけどね(笑) 砲台は戦車並みの重量なので輸送と動力供給が大問題だけど、舷側の5インチL40高角砲(八九式)を水平に向ければ重戦車とでもやれる超強力武装。しかも連装速射砲。

名簿に載ってないので加来大佐以下の将兵は生き残ってないのでしょうが、ミッドウェーで処分されそこなった飛龍の艦内には、一体どれくらい「使えるもの」が残されているのかとか、ちょっとwktkしますね(^^;;

ニ式艦偵は…蒼龍のほうに載せてたのかorz