スカーレット・ストーム - 第二海軍物語

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「萌え架空戦記」だそーです。「架空戦記」ってのは

「歴史シミュレーションとかなんとか言いながら、実はその殆どが“願望充足のため歴史を捏造すること”に特化してる」

という割と特殊な、SFとミリタリーの境界線上の「すき間ブンガク」1ジャンルだったりするんですが、そこに「萌え」を持ち込んでみましたよ、という。

「萌え」ってのは、要するに「女の子が一杯」をしたいらしい(^_^;)

で、「20世紀の前半に婦女子とミリタリーを同居させる」という無茶を解決するために中岡潤一郎氏が持ちだしてきた「エスエフ設定」は、

男女出生比の異常な偏り

でした。(何故か)女が男の4倍も生まれるような世の中になっちゃったんで、軍にも(当然)女の子が一杯居ますよ、という(^_^;)

ちうことで、この世界の帝国海軍は

  • 女子禁制の(旧来の海軍の延長である)第1海軍
  • 構成員の大半が女性となっている第2海軍

    という2本立て構成になっとります。

    う〜む。感心するべきか呆れるべきか、結構びみょーな世界設定ですな(^_^;) まぁ先に「萌えミリタリーたるべき」という結論があって、(若干ならず無茶な)「そこ」に誘導するための「言い訳」なんだから、無茶なのもしかたないのか…(^^;;

    戦記部分は、意外と(?)まともです。

    「開戦(史実と同じ1941年末)劈頭、マーシャル沖に出現した米艦隊を迎撃せんとする帝国海軍」

    ってのは米国の対日戦争計画「オレンジプラン」を知るヒトの常識に近い構図→この時期に米側から仕掛ける戦争なら大抵こうなるんですが、これをほぼそのまま、言い方は悪いですが結構「何の捻りもなく」出してきてます。(軍縮条約をいじってるので、史実とは艦隊構成が異なる→「そのまんま」とまでは言えない。戦争目的が異なるので侵攻の基本戦略も違う)

    勿論歴史改変に伴う装備変更等もちゃんとありまして、“女子でも扱いやすいように設計された”という零式艦爆とか一式艦攻なんて架空機も出ては来るんですが・・・・

    まったく説明が無く、なにがなんやら全然解りません(-_-;)

    たとえば「零式艦爆は引込み脚」「50番(500キロ爆弾)を搭載」という描写はあるんですが、どこのどの発動機を積んだどこ社製の機体なのか、全然解んないんです。エンジンが空冷なのか水冷なのかもわかんない。

    その搭載力や引込み脚から99式改ではありえないし、油圧操縦云々を考えると、史実で次に出てくる「彗星」(←なにもかも電動&熱田エンジン絶不調:^^;)の繰り上げ当選でも無さそうで…。これ、ちゃんと設定考えとるんでしょか??

    開戦時に「零式艦偵」とかではなく「彩雲」(史実の機体と名前こそ同じだが、「双発艦偵」というまったくの別物。青山智樹氏の「北斗」みたいな機体か? 艦載してるので、陸軍の100式司偵では多分ない)なんて名前の機体が飛んでることも、なんも説明ナシ。いきなり「そこにある」前提でハナシが始まっております(^_^;)

    これが佐藤大輔氏なら、この機体の主任設計者のエピソード捏造に最低でも数ページくらいは割きそうですけどね〜(笑) 

    「萌え」部分は、ワタシにゃあ良く解らないんで、省略(^_^;) ちなみに表紙中央の白服は、巨乳のアヤナミ系無口参謀見習い(有能)です。ちょっとこの設定はエエかなと思わんでもないし、他にもメイドやら巫女やら無理矢理投入しとりますが、無理矢理は所詮無理矢理。

    この手のオハナシの例に漏れず(なぜかそーゆ「ヲタっぽい」パロディ多いんですこのジャンルは。「異常に多い」と言っていい)、パロディーもいろいろたたき込まれてました。個人的に「赤い3連星」はやりすぎだと思いましたけど、

    「性格破綻者の艦長(←それなりに有能)に率いられた新鋭駆逐艦、撫子型1番艦」

    にはちょっと笑いました(^_^;) きっと同艦の「海軍一背の低い砲術長」の決め台詞は「バカばっか」なんでしょう。でも、もう「子供じゃありません。少女です」と言えるような歳じゃあない、たぶん(^^;;

    山本“女好きなので女から遠ざけられてる”五十六とか牟田口“(無能だけど)女性に人気のある”廉也、山口“女に優しくなった”多聞等々、実在の人物にもすげぇ味が付けられております(^_^;)

    でもやっぱそのハイライトは、女性従兵と仲良くなった山口に

    「いいなあ。多聞丸」

    と言わされてる宇垣“鉄仮面”纏でしょね(^_^;) マジひっくり返りました。すげぇ(^^;;

    江草“艦爆の神様”隆繁が雷撃してたり、戦況図が地図にもなんにもなってなかったり(まともなのは巻末の戦闘序列だけかも)、戦闘展開はともかく各種描写がすげぇ読みにくかったり、他もあちこちボロボロでディテールも荒かったりで、正直「戦記」としての評価は厳しいですし、「萌え」も、そんな大した事はありません。

    まぁ取り敢えず、「エポックメイクであること」は認めてもいいかな、ってな感じでしょかねぇ? あくまでもコンセプトカーとしての評価で、実用車としてではありませんけど。「イタリア海軍の艦艇みたいな」でもいいかもしんない(笑)

    この表紙絵見て、「ふ〜ん、最近吾妻ひでおはこんな仕事してるんだ」と妙に納得したのはワタシだけではないハズです(^_^;) 小だまたけし氏という全然別のヒトの絵なんですけど・・・・この絵はすっげぇ似てますよな。

    ワタシゃ同氏の(「まだ子」名義の)単行本

    てんねん
    ISBN:4883322610

    もしっかり持ってたりするんですが、マジで全然解りませんでした(^_^;) このエントリを書くために調べて初めて気がついた(^^;;

    スカーレット・ストーム―第二海軍物語
    ISBN:4877770607

    ついでに小だま氏名義の本も。

    ちえのわ
    ISBN:4901978446

    最近時々本屋さんで見掛けるようになった「SEED」コミックスってのは、同名のオンラインマガジン連載作品を集めたモノだったんすね。

    コレも初めて知りました。