ホーリーランド(5)

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格闘技や武術系ではよく「実戦的」とか「実戦」という言葉を使うんですが、この「実戦」という言葉、具体的には「どのレベル」で捉えればいいんでしょう?

ワタシは昔、実際に「実戦的」と称して目突きやら金的蹴りやら関節蹴りやらという「人体を確実に破壊する手段」の反復練習をやらされてました。

でも、この極めて剣呑な戦闘システム、一体どこで使えばいいんでしょう??

「相手の戦闘(反撃)能力を確実に奪い取る手段」

として極めて有効なこれらの攻撃技術は、極めて有効であるが故に「使えない」技術です。傷害罪を重くする役にしか立たないという意味で

「百害あって一利無し」

なのかもしれません。

実際に殺されそうになっていても、膝を蹴り折り金玉を蹴り潰し目ん玉えぐり出してなおかつ正当防衛の成立を期待することには無理が有ります。

刑法第三十六条
急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

つまり、

・他人を破壊する事を禁止する
・「防衛」の結果破壊した場合刑を軽くしてやらないこともない

ということで、「破壊」はやはり非常にリスキー。

まぁ確実さを「保険として持っておく」とこれが心理的な支え(=その気になれば何時でも壊せる)になったりしますんで「一利無し」というのはちと言い過ぎかもしれませんが、「実際に使う」となるとやはり負の面の大きさ(←凄くデカい)を考えないわけにはいきません。

この「ホーリーランド」。世界観やキャラクターメイキングにおいては(かなり意図的に)少年漫画的ファンタジーに徹してるんですが、

・「殺す」「壊す」ではなく「倒す」
・過度に破壊しない

という「社会システムに制限された試合的な実戦」を「リアル」に描き出しているという点で、やはり希有であり傑出した存在だと思います。「リアル」と本当を混同する奴が出てきかねないという意味で「危険」と感じるくらい。

「刃牙」が結局「リアル」風味を若干残しつつ「強ければ何をやっても許される」(=ドラゴンボール的)世界観のなかで無限ループを繰り返している事に比べ、「ホーリーランド」は未だ「リアル」へのフックが生々しく残ってまして色々考えさせられる部分が多いです。

板垣氏も森氏も「リアル戦闘」に対する奥深い素地がにじみ出てるんですが、「使い方」とか「生っぽさ」みたいな面で両者の表現手法は大きく乖離。

それ故「刃牙」は(最初から荒唐無稽でしたが:^^;)どんどん風呂敷が膨らんで収集が付かなくなっており、「ホーリーランド」は、タイマン主義のイイ奴を連続投入するという極めて夢想的な荒技を用いても街のゴミ溜めから抜けられないという(^_^;)

ホーリーランド (1)
ISBN: 4592137418

ホーリーランド (2)
ISBN: 4592137426

ホーリーランド (3)
ISBN: 4592137434

ホーリーランド (4)
ISBN: 4592137442

ホーリーランド (5)
ISBN: 4592137450