・本当は、物語の展開においてやっちゃいけないことは何もない
・可能性だけなら、何でもありうる
・ただし、
-それまで積み上げてきた展開にスジを通したい
-納得できない、スカっとしない、不快になる展開は避けたい
-その他(文化的・政治的な要請、商業上(グッズ販売など)の要請など)
→ゆえに志向と期待の収束値として「こうなったほうがいい」「こうすべきだろう」という一定の必然的な展開・妥当性の高い展開が求められ、それをはじき出す段取りが生じ、またその段取りが他の生産者・消費者にも普及する
→普及した段取りのうち、とくに有効で便利なものは共有のルーチンとして再利用され続ける
→そのルーチンの第一工程を「定石」「お約束」「前フリ」「フラグ」と呼ぶ
(※厳密には、「定石」「お約束」は初手から結果までを包括し、「前フリ」「フラグ」は暗に約束された結果を念頭に置きつつも、とりあえずはそのとっかかかりのみを指す)
→合意未満の擬似的な"共犯関係"の定着
最初は「こうなってこうなった」「こうだからこうなったほうがいい」だったものが「こうすれば必ずそうなる」「こうしたからにはこうなるはずだ」という暗黙の認識になり、それが生産・消費両サイドに広がる。契約や合意をしているわけではないが、限りなく"共犯関係"に近い不文律が立ち上がる
→"共犯関係"は段取りを「感情の根拠」ではなく「作業の理由」にして展開を手っ取り早く処理する。作業が行われれば、その感情が発生することが過去のパターンによって"保証"されている(味をしめている)から
(「孫悟空はクリリンが殺されて激怒し、パワーアップした」のと「クリリンが殺されればパワーアップする(だから死なせよう)」の認識の違い(幽助の目の前で桑原を殺せば真の力を引き出してやれると考えた戸愚呂のロジックのメタ性)。また、サイヤ人の特性「死にかけて回復したら強くなった」初期とナメック編以降の「だから死ぬほど自分を追い込もう」の違いも然り)
・ただし、作業性の強いルーチンは大抵の場合、陳腐化と物語への侮りの道を進むことになる
・そこで、やっちゃいけないことは何もない以上、空気を読まず恣意的に定石を崩して消費者を驚かせ、新味の刺激を稼ぐこともできる
(戦争が終わって無事に結婚する兵士/主人公が冥土の土産を受け取ってそのまま殺される等々/参照:ハリウッド映画のお約束を逆手に取った「ラストアクション・ヒーロー」劇中の小ネタ/参照:いっさいのハリウッド的お約束と観客への慰撫を拒絶したハネケの映画「ファニー・ゲーム」)
・多くの場合それはただ安易に"共犯関係"を破るだけのものとして、ギャグになってしまうか最悪ひんしゅくをかってしまう(例:原作でファンが馴染んだ"法則"を意図的に排棄する映像化タイトル)
・だが、その中でごくまれに、「力強い定石崩し」を通用させてしまう怪物的なクリエーションがあって、それが大成功することがある
(例:ラブコメのメイン・サブもしくは日常・非日常ヒロイン間の下克上/ギャルゲーで二股かけられた女の子が発狂・自殺・刃傷沙汰)
・だが(^^;;;、我々はここでもやはり味をしめるので、「定石の崩し方」そのものがやっぱり定石と化し、次からは同系統のルーチンが要求されるようになる
(例:様式化・ジャンル化したヤンデレ)
・そして「普及した定石崩し」に対するアンチとして「定石崩し崩し」が生じることがある
(※これは必ずしも原点回帰ではない。いったん定石が崩れる体験をした者は定石に戻っても「あえて」という一歩ハシゴをのぼった視座から降りることができない)
・かくしてルーチンの定着と新味の開拓は互いにからみあって上昇しながら相克と輪廻をくりかえし、僕らはその螺旋のなかで永遠にパブロフの犬のよだれをすすり続けるのであったワンワン
[追記]
ただ、建設的な見方をすれば、フラグが生まれフラグ崩しが生まれ、またフラグ崩し崩しが・・・と進んでいくにつれてそのぶんクリエーターが選べる展開のバリエーションが豊富になっていくわけで、けっして焼き畑農業に終始するわけではないとも思います。
あと、おそらく「フラグ」の前身とみなせる「お約束」というメタ単語そのものが一般消費者に膾炙したのはいつごろかというと、直接には80年代のバラエティでしょうか?? とんねるずあたりで。
まあ展開の定石なんてのはそれこそ古代の舞台劇や戯曲からいくらでもあっただろうけど、ジャンル論でかたくなに「かくあるべし」にこだわりすぎるビョーキの厄介さとも関係あるから、深刻な問題ではあります。
ともあれフラグとかお約束については、ユーザーが「お約束どおりだ」「裏切られた」と感じるにはそもそもそういう「約束事がある」「決まっている」という、ほとんど錯覚にも等しい概念がいつのまにか無意識の前提になっているわけですが、そによくよく注意を払ってみると、現実の生活における人間の心理──身の回りで起きる物事の因果関係を学習し、次からは同じ条件で同じことが起きるのを当然と思って期待or警戒するという生存上かなり原始的なレベルにおよぶ心理の不思議さと面白さが見出せるかもしれません。
書き漏らし。
「よその畑ではベタな定石でも、別の畑に移植したらそっち側の消費者にとっては新味」というケースがありますよね。たまに他の畑から出張してきたクリエーターが自分の引き出しの中からベタでやったのが大きな反響を受けて戸惑うとか。
んでもって、もりあがってるユーザーに対して"知ってる人"から「そんなん●●ジャンルでは昔からよくある展開やん」と上から目線のツッコミが入って空気が悪くなるとか(笑)
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素晴らしいご高察に、ここはピアノ・ファイア?と慌ててしまいました。
確かに、僕たちは普段、かなりフラグを意識しながら漫画を読んでいますね。
だから、その期待を裏切らないバトル&ラブコメエロスを展開してくれる赤松健は大好きです。
今までで最もありえないと思ったのは、るろうに剣心で雪代縁が薫を殺しちゃったとき。
それと、ジャンプのミスターフルスイングで主人公チームが、ライバルチームと当たる前に準決勝で負けたとき。
薫は人形。ミスフルは都道府県別選別大会で別の敵と戦う。というオチに二度ビックリです。
フラグくずし、ではないのかもしれませんが、ミスフルだけでなく、スポーツ漫画(はじめの一歩・おおきく振りかぶってなど)を読んでいると、最初は主人公がいじめられっこや部員十人の新設高で初出場とか、物凄く弱いポジションでありながら、けっこう強い敵相手に毎回苦戦しながらも連勝していくので、最初は苦戦、後半逆襲、最後に勝利のパターンに慣れてしまうので、
主役サイドがもうどう見ても勝てない状況でも、心のどこかに「まだこっから勝つんだ!きっとそうだ!」っていう気持ちを持って読んでいるので、負けが決定した瞬間の衝撃はけっこう大きいものがあります。
でも、途中で負けないと、無敗で世界王者とか、部員十人で初出場甲子園優勝とかなっちゃって、馬鹿漫画になってしまうから、どっか途中で負けるのだろう、と思いつつも。
「負けないでー!」とか思ってしまうあたり、もう漫画に夢中になりすぎですね。
>主役サイドがもうどう見ても勝てない状況でも
そのへん、あしたのジョーに面白いくだりがありますね。
「ろくにメシも食えなかったハングリーファイター」である金竜飛との戦いで、どうみてもジョーに勝つ根拠がみあたらなかった(食い物のある環境で戦ってるヌルい日本人というロジックを跳ね返せそうにない)のを、それでも"なぜか"立ち上がり前に進んだ果てに、「選択する余地もなく単に"食えなかった"だけのお前より自分の意志で"食わなかった"やつ(=力石)のほうが人間として強い」というアクロバティックな突破点で押し返した見事な逆転エピソードは、「負けフラグ」「逆転フラグ」というのを考える上でいい材料になりそうです。
フラグとかお約束とかよくわからんのですが
氷柱がフレディを認めなかったり急にフラミンゴが登場するのもその範疇に入りますか?
ベビプリはわりと難しくて、「たぶん後に来る何かの展開の前フリではあるということだけは分かるが、それが実際にどんな展開なのかギリギリまで読みきれない」パターンが多い気がします。
「死に」フラグとか「負け」フラグという場合の「●●」がはっきりしないんですよね。
Posted by: みやも(管理人): 2008年04月28日 20:56