虚構の物語は薬にも毒にもなる。
とりわけあまりに出来がよすぎる終わり方をした成長物語は難儀なものだ。
グランドフィナーレに心ふるわせながら「主人公はやりとげた! よし、俺もがんばろう!」と活動エネルギーをリアルに持ち越せるのなら薬になったということで万々歳だが、ともすれば主人公と自分の境がぼやけて主語抜きの「よし、やりとげた!」という達成感だけを頂いてしまう場合がままあり、そうなると物語の完結と同時にこちらの気力まで終息して、あとはぐったり脱力してしまうことになる。
己のリアルではまだ何も始めていないのに、もうすべてを片付けきったような満足感でまっしろになる有り様をフィクション燃え尽き症候群とでも呼ぼうか。これはまったく甘美な毒効である。
だから、例えば、テンションを上げまくったところで前のめりのままいきなり幕をおろす、ぶっきらぼうな打ち切り形式にメリットがあるとすれば、それは我々に「ここまで盛り上がったエネルギーをどうしてくれようか!」とリアルに煮えたぎる熱を残してくれることだろう。それならば、すくなくとも燃え尽きる恐れはないのである。
ときとして「打ち切りだが素晴らしい」と感じる作品が世にあらわれるが、そこにはじつのところ「打ち切りだからこそ素晴らしい」面も少なからず潜んでいるように思われる。出たなゲッタードラゴン!
![]() | 男坂 (上巻) (集英社文庫―コミック版) 車田 正美 集英社 2000-12 売り上げランキング : 385437 おすすめ平均 ![]() Amazonで詳しく見る by G-Tools |
![]() | 五右衛門 (SPコミックス) 石川 賢 ダイナミック・プロ リイド社 2007-04-26 売り上げランキング : おすすめ平均 ![]() Amazonで詳しく見る by G-Tools |
![]() | グランドライナー (少年サンデーコミックス) 吉田 正紀 小学館 2006-04-18 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |