『彼氏彼女の事情』で有名な津田雅美先生の最新作『eensy-weensyモンスター』1巻の発売日が近づいております。
壮大な群像劇を敷きながら、一人のキャラに一人の相手という<つがい>のロマンスを徹底してきた津田漫画はより洗練・先鋭化され、今度の「ewモンスター」では登場人物の数を絞ってヒロインと相手の少年との1対1の交感と距離感をじっくりつづっています。
で、技術的にも過去作品から続けてみるとだんだん進歩していて、とくに人数や設定情報をシェイプアップしたぶん画面の使い方に余裕が出たというか、見開きいっぱいを使って空間、もっといえば空白をぜいたくに利用する絵作りが際立ってきています。
その点を詳しく述べているブログがあったので、リンク。
・紫呉屋総本舗
-津田雅美を考える
-津田雅美を考える その2
-今市子の場合
とくに注目は、「ページまたぎ」について重点を置いてある指摘。
少年向け少女向けにかぎらず漫画を見開きいっぱいで一面化するテクニックについてはいろいろ語られていると思いますが、こういう変則的なコマ用法はまだまだ言及の余地があるんじゃないかと思います。(リンク先では少年漫画でページまたぎはあまり見かけないとありますが、いちおう一話に1,2度ていどの頻度でならよく使われます。参考画像)
で、その「大きく贅沢な使い方」とのからみで、上記リンク先でこんな一節が。
ここまで来ると当然の成り行きで、台詞の分量も少ないです(これはさすがに数えませんけど)。
せっかくなので、確認のために数えてみました(笑)
今月号のLaLaからewを含む3作品、以下のルールにてカウント。
※句読点、「!」「?」、括弧も数える
※リーダ「…」、伸ばし「ー」はひとかたまりで一字に数える
※ハートマークは文章とのつながりがあれば数える
※よみがな、擬音、手紙・メールの文面などは除外
▼サンプル(1)
津田雅美「eensy-weensyモンスター」第9話 本編30pぶん
【写植テキスト】
フキダシ内セリフ: 700字
客観解説: 0字
モノローグ(囲み内): 140字
モノローグ(囲み無): 68字
合計: 908字
【手書き】
セリフ: 172字
客観解説: 199字
合計: 371字
--------------
総計:
1279字
1080字(解説除外、人物の発言・思考のみ)
平均:
42.63字/p
36字/p(解説除外)
30.2字/p(手書き除外、写植のみ)
▼サンプル(2)
田中メカ「キスよりも早く」第4話 本編31pぶん
【写植テキスト】
フキダシ内セリフ: 1639字
客観解説: 0字
モノローグ(囲み内): 183字
モノローグ(囲み無): 196字
合計: 2018字
【手書き】
セリフ: 512字
客観解説: 240字
合計: 752字
-----------------
総計:
2770字
2530字(解説除外、人物の発言・思考のみ)
1ページ平均:
89.35字/p
81.61字/p(解説除外)
65.09字/p(手書き除外、写植のみ)
▼サンプル(3)
葉鳥ビスコ「桜蘭高校ホスト部」第52話 本編30pぶん
【写植テキスト】
フキダシ内セリフ: 2412字
客観解説: 17字
モノローグ(囲み内): 409字
モノローグ(囲み無): 60字
合計: 2898字
【手書き】
セリフ: 177字
客観解説: 39字
合計: 216字
-----------------
総計:
3114字
3058字(解説除外、人物の発言・思考のみ)
平均:
103.8字/p
101.93字/p(解説除外)
96.03字/p(手書き除外、写植のみ)
急いで数えたので多少のカウントミスはあると思いますが、誤差でどうこういうレベルを越えてここまではっきり差が出ています。
なお、前回のewモンスターが総計で約1330字(友人調べ)なので、毎回およそ千数百字で推移しているようです。ざっと体感的にみてもそんなところでしょう。
LaLa誌のなかでは「金色のコルダ」などホスト部以上に文字が多いものがいくつもありますので、ewモンスターの寡言志向っぷりはきわめて独特のポジションにあるといえます。
そして大事なのは、これだけ少ない字数でありながら、ewモンスター劇中の情景や描かれている人間心理というのは、とても深く広く豊かに伝わってくるってことなんですね。そこが不思議というか、すごい洗練度。
まるで俳句みたいな漫画だな。
ところで、手書きのちょこちょこした文字がどのくらいあるかってのも、読みやすさ・読みにくさの大事な指数だと思います。少なくとも少女マンガ初心者の俺が読む際には、手書き文字の量ってのはコマ構造と同じかそれ以上にハードルになる(^^;;
たとえばホスト部はセリフ量が多いんだけど、手書きが少ないんで意外にすらすら読める。
対してキス早は、セリフ量はewとホスト部の中間くらいだけど、手書きのサブ台詞がやたら多いので雑然とした読感が出てしまう(まあ、あれはそのゴタゴタ感がいいんですけど(笑))
こういうふうに、物語を伝える具体的な材料として、画面やテキストに注目しながら読んでみるのも、作者や作品の個性が吟味できて楽しいものです。
テキストのカウントご苦労様です。実際数えると結構とんでもない数字になって面白いですね。
少年マンガのページまたぎについては、次回訂正させていただきます。結構いい加減に感覚的な話をしてますので、多分間違った情報(事実誤認)もあると思います。ご指摘いただきありがとうございます。
Posted by: 紫呉屋: 2007年07月02日 00:42>紫呉屋
はじめまして。貴サイトのewモンスターへの考察、とても刺激を受けました!
ここまではっきり差があるとは思わなかったので驚きました。
友人によると前回もだいたい同じ量だそうなので、このくらいがewの標準なんでしょうね。
少年漫画の例を出したのは、「使われてはいるがさすがに1話に4回はまず見かけない」という意味で、むしろ論旨を補強するものだとお考えください。
今後も紫呉屋さんの示唆深い論考を楽しみにしております。
Posted by: みやも(管理人): 2007年07月02日 00:56