ぼくたちはいつだって何かを選びながら生きています。
選んでおこなったふるまいには結果がともない、その結果から何らかの評価が下される。そしてその評価が正しいと思える場合にはそれを認めて受け入れる。それを積み重ねていくうちに、「自分はこういうやつだ」「あいつはああいうやつだ」と個人差のある人格・性格・気質が示されていきます。このときには、われわれは己が納得するかぎり自分の人格について責任を負うことにやぶさかではありません。
では、ひっくりかえして「可能だったが選ばなかった選択の結果」について評価された場合はどうでしょうか。
握手を求めたのに「お前はその手で人を殴ることができたから乱暴者だ」
お店で会計を済ませたのに「お前はこの商品を盗むことができたから泥棒だ」
恋人に料理を作ったのに「お前は包丁で人を殺すことができたから人殺しだ」
……だなんて、すくなくとも哲学論議の場ではない実生活においては無茶なロジックです。
ひとは皆「実際におこなったひとつのこと」の連続で出来上がる一本道の人生に責任を負うのであって、それ以外のすべての「ありえた道」についてまで責任を追求することは出来ないし、追求してもしょうがありません。あたりまえですね。
しかし、そうではない存在もあります。それが選択分岐式ゲームの主人公です。
たとえばある特定のルートでのみ純愛を一人の女に捧げる主人公が、他のすべてのルートでは優柔不断で本命を選べず何人もの女をとっかえひっかえしては可哀想な目に遭わせる惰弱な男となるような場合、彼への評価はたいてい「いけすかないヘタレ主人公」ということになるでしょう。そこでは純愛ルートの可能性が優柔不断ルートの可能性と差し引きの上で消却されてしまっています。
先に述べた通り、普通に考えれば、そうやって可能性まるごと人格に責任を負わせるというのは実際にはご無体な話のはずですが、僕たちにとって分岐ストーリー作品の主人公はやっぱり「可能性の総体」として印象をはじきだして評価せずにはいられないのも事実。なぜでしょうか?
簡単にいうと、それは、選択肢を選び直して「全ての可能性を実体験できる」ゲームの宿命といえます。多くの筋道をもつ作品をコンプリートしたとき、我々はすべての可能性を実際に起きたこととして思い出すことができるようになってしまう。すべてが可能性でありながらすべてが既成事実でもあるという不思議な時空を、ゲーム攻略者は内在させることになる。
そのために、主人公は劇中においては毎回一度きりの人生でひとつの人格だけに生きていながら、我々からは「あんなことだけでなくこんなこともする、あいつは●●な奴だ」と全体ひっくるめた評価を下されてしまうわけです。
作り手のほうでもそのへんは気遣いが多く、分岐先の展開によって主人公の性格がぶれないようにシナリオの内容を調整するとか、あえて極端から極端へ走れるような展開で楽しませるとか、いっそのこと一本道にしてしまう……など対策が施されている例はよくみられます。
主人公に固有の名前がなくて、また主人公が一言もしゃべらないゲームなら、りっぱなことをしようが酷いことをしようが僕たち自身が直接にその責任を引き受けられるんですけどねえ(笑) 最近は主人公もキャラクター消費の一環としての趣を強めてきたので、ますます人格上の責任は重くのしかかっていくことになりそうです。
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なるほどなあ、面白かったです
Posted by: ketanu: 2007年05月22日 04:39ありがとうございます。
思いつきをざっと書き付けたメモなので、読みづらい文章なのはお許しください(^^;;
そう言われてみれば、プレイヤーキャラクターに人格があるゲームだと平気で酷い選択肢が選べるけど、魔人学園や九龍妖魔学園紀みたいな「キャラ=自分」なゲームだと選び辛いんですよねぇ。
あと、昔のエルフのゲームでは酷い選択肢を選ぶとプレイヤーキャラが文句を言うなんて展開もありましたな。
>「キャラ=自分」なゲームだと選び辛い
そうそう(笑)
自分の良心がダイレクトに試されますから、かえってブレーキがかかりやすいというのが面白いところです。
>昔のエルフのゲーム
「おい・・・いいのか?」みたいに問い返してくるんですよね。(こっちの言うこと聞かなかったりも)
臭作とか鬼作みたいな鬼畜系はその逆で、まともな選択に文句言うのがいかにもな感じでした。