少年漫画、児童漫画の主人公には健啖家というか大食漢というか、異常な食欲のもちぬしが多いことについて。
80年代以降の少年ジャンプでは「ドラゴンボール」の孫悟空がある種のモデルを作ったといえば具体論で終わっちゃう話ですが、それとはちょっと角度を変えた見方もしてみたいと思います。
有名な古い言い回しに「英雄、色を好む」ということばがありますよね。
大きなことを成し遂げる人は精力旺盛なので、それがエロい方面でもあふれ出して性的にもどん欲になるというイメージです。
現実問題としてどうかは分かりませんが、少なくともフィクションにおいて「偉大な人物が内に抱える大量のエネルギーが生活の中でも何か常人を越える勢いのふるまいにつながる」というのは人物描写としてごく自然なエピソード作りであり、そこで一般的に分かりやすい物差しとしてセックスがあてられるという次第でしょう。
しかし、基本的に"童貞的な魂"(=大人の世慣れしたロジックに与さない感情回路)の持ち主であることから生まれる爆発力が大事な少年漫画の少年主人公、とくにヒーロー系キャラの場合、下半身の暴れ具合で大物っぷりをみせつけるのは困難です。大きな夢を頭上に見上げる一方で、下半身をつなげた異性に社会的な甲斐性を通すというのは、少年のやることではなく、男のやることだからです。「主人公がまっすぐに男を立てる"までの"物語」が少年ヒーローの本道だとすれば、そこを踏み越えてしまうと読者がさめて気持ちが離れるリスクを背負い込むことになります。
「花の慶次」や「シティーハンター」(特に初期)の主人公が青年以上の年齢設定でなければならなかった理由、「北斗の拳」が女を奪われあるいは失う男たちの放浪譚だった理由、「ドラゴンボール」の孫悟空が所帯もちとしては完全に不適格者だった理由、「ジョジョの奇妙な冒険」で主人公が身を固めるたびに代替わりする理由、「バスタード」のD.S.が無垢な"るーしぇくん"との二重化から始まった理由、「刃牙SAGA」がわざわざヤング誌をバイパスしなければいけなかった理由、最近でいえば「サムライうさぎ」の主人公が既婚者でも童貞である理由はそこに見出すことができます。
もしこれを越えて「夢にも女にもスジを通そうとする」場合は、つまり少年主人公としての在り方から男としての在り方へシフトしてまとめに入ったということであり、作品の完結が間近に迫ってきている兆候だと思っていいでしょう。ってこたぁマガジンのアレもいよいよ終幕が近いんでしょうかなぁ?(まあ大和くんはヒーローキャラではないのでまた別分野ですが)
んでもって、ここで話を本題に載せましょう。
上記の理由で、下半身によるアピールが封じられているぶん、少年ヒーローは別のところで大物ぶりを示す必要が出てきます。まあ必要というのは言い過ぎにしても、とにかく「色を好む」のかわりになるような何か別の旺盛さが描けないか、という語り部(作者)の要請が生じるのは自然なことでしょう。
そこで、「色」は「食」にすげかわり、年若き英雄がむさぼるのは色町にひしめく美女たちではなくテーブルいっぱいに並ぶ豪華料理であるという次第なのです。
【まとめ】
大食いする少年主人公の姿は、「英雄、色を好む」→「英雄、食を好む」の変換像である。
まあ、厳密には「色も食も好む」のが大人の英雄で、少年の場合は色を抜いたぶん食が強化される、という形かなと思われますが。
さてさて、ここで面白いのが「Yes!プリキュア5」。
キッズ向けアニメで主人公は皆かわいい少女たちですが、メイン5人中4人が大食いキャラという、なんだか新鮮な設定になっています。ひとりふたりだったらまだキャラの個性付けのレベルで理解すればいいのですが、みんながみんなここまで異次元胃袋のもちぬしでドカ食いしまくるシーンを繰り返し繰り返し描かれるにいたっては、なにかもうちょっと高いレベルで受け取ったほうがいいんじゃないかという気になってきます。
そこで「食を好む少年英雄」像にそって考えてみると、プリキュアのメンバーは少年ヒーローの要件をばっちり満たしているといえるんじゃないかと、そんな風に思うわけです。この場合は少女ヒーローっつうかヒロインで、上で書いた"男を立てる"というあたりは抽象的な意味あいで適用してください。
つまり簡単にいうと、彼女たちの大食いはけっしてご愛嬌のギャグだけではなく、英雄としての格、つまり"ただものではない"ことをわれわれに証明する、立派な物語的アクションでもあるということですね。
だてに日曜朝のスーパーヒーロータイムに肩を並べているわけじゃないと(笑)
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