1988年に劇場公開されたアニメ「恐怖のバイオ人間/最終教師」のフィルムブックを読んだ。
原作・山本貴嗣で芦田豊雄が監督、J.C.STAFF制作、竹中直人がキャスティングされてたりエンディングテーマは米米クラブが唄ってたりと色々ツボをついてくる。
現物はむかし一回テレビで観たっきりなのに、細部に至るまで記憶が確かだったことに自分で驚く。熱にうかされるヒロインの顔があまりにも艶っぽいものだから、思春期の俺の脳裏によほど強く焼き付いたのであろう。いま見てもエロい。
不良の巣窟と名高い高校に、ゴキブリの遺伝子と融合した怪人・茶羽顔八(ちゃばねがんぱち)がやってきて学園の支配をたくらむ。これに、総番長である怪力美少女・白鳥雛子(しらとりひなこ)が立ち向かうストーリー。
ヒロインは清純可憐な優等生だが、子供のころから常時ブルマーを穿いてきたせいで極度の冷え性になっているという弱点をもつ。高校受験の日にブルマーを穿きそびれたせいでお腹が痛くなって本命の試験を受けられず、やむなく三流高校に転がり込んだという設定である。はっはっは。
ブルマーの着用は戦闘力の維持にも大きな影響を及ぼしており、うかつに脱ごうものならすぐに健康を害して力が低下する。つまり「ブルマー着用時のみ強さを発揮できるヒロイン」なのだ。
本作はアニメにおけるブルマーの取り扱いを歴史的に俯瞰する際には「トップをねらえ!」以上に重要な位置を占めるタイトルなのだが、悲しいかなそんな方向で資料価値を要求される機会は皆無に等しく、いまだDVD化もされていない。 残念至極。
あらすじを一見したとおり、基本的にはアンポンタンなドタバタ喜劇なのだが、学園物というジャンルでみたばあい、なかなかの深い趣もある。
劇中で、悪役となるゴキブリ怪人は過去に学生運動の派閥を要領よく渡り歩いた経歴をもつと語られる。それが80年代の高校にやってきて女子高生ヒロインに返り討ちにあうというのは意味深長だ。つまり60年代に起こり70年代に内部崩壊した学園闘争のうねりの余勢だけでも繰り越そうとする往生際の悪い流れを80年代の破壊趣味に満ちたギャグによってときほぐしてしまおうという、けっこうまっとうな?歴史処理の図がうかがえるのである。
じっさい90年代以降、フィクションの学園物において、学生運動(的な構造)も脱・学生運動(的な構造)もドラマのメインフレームとしてはいまいち流行らなくなったのを思えば、この時期の解体作業はまあ目的を果たしたということなのだろう。ただ、そこから現在にいたるまで、なんとなしに根源的な問いを奪われたままなのは難儀なことである。
たとえば、ラストにヒロインの子分たちがつぶやくこの台詞は、いま現在の我々からすると冗談として片付けるにはちょっと切実で、コワい。
「最悪なやつだったけど、俺、妙に引っかかるところがあるんですよね・・・」
「顔八はあの世にいったけど、俺達の青春はどこへいくんでしょうね」
学園の改革をねらった顔八に対して、ヒロインたちの立場はどこまでも既存の体制を維持することにある。自分たちはいまの状態でけっこううまくやっているから、ひっかきまわしてくれるなと革命の因子をはじき出すのが主人公サイドなのだ。ギャグだから笑えるが、そこには「何に向かって牙をむいているのか」という、不良キャラのアイデンティティ危機が潜んでいる。
体制への反逆者としての本懐を果たそうとしたのは、一体どちらだったのか?
「妙に引っかかる」とはそういうことだろう。彼らは自分たちのねじれになんとなしに気づいているのだ。
ちょっと前に、週刊少年サンデーで連載された漫画「ハルノクニ」最終回を読んで、主人公の言動よりも首相の散りざまのほうに感情移入──はっきりいってしまえば爽快感を得てしまったとき、不安になった。最初はたんに僕が年を食って大人キャラのロジックに肩入れできるようになっただけかと思ったのだけど、同時に、ひょっとしてそれだけでもない、何かの限界がそこに描かれてしまったんじゃないかとも思えてゾッとしたのだ。よく考えると、あの漫画で最大の反逆者で革命家は主人公ではない、首相の方だったのだ。主人公を穏健な告発者ていどにしか描けなかったのは、単に誌風や芸風によるだけのものか? それが不安になったのだ。
80年代までに<私集団による(直接的な)暴力的社会改革>のドラマが解体された後のこんにち、学生を主人公にした作品で「若さゆえのレジスタンス」という題材が、それだけで自重を支える背骨を通せるのか、僕には正直よく分からない。ラブコメ、エロコメやギャグ、ホビー系などで純粋娯楽に割り切ってしまうのが正しいかという気もする。
ただ、ぼくは観てないけど学生テロリストが主人公で「反逆の」とタイトルにつくアニメ(笑)が人気を博しているらしいし、週刊少年漫画ついでにいえば、チャンピオンで「アクメツ」や「ガキ警察」のようにロックでパンクな作品が読めたのも近年のことだ。いやロックもパンクも全然知らんけど、とにかく無軌道な青春と社会のガチンコ勝負はまだ描きようがあるとも期待したい。
(その意味で、じつはマガジンの「さよなら絶望先生」は非常に熱い漫画なのだ。主人公は先生だけど)
ジャンプの「デスノート」における夜神月の行動だって、そういう線から改めて評価できる。そう、月くんは死んだ魚の目をした大人があふれかえる世の中へ反逆し、このうえもなく青春に燃えて燃えて燃え尽きていったパンクでロックな野郎だったのだ!!
書いてて恥ずかしくなってきたのでここで終わる。
[追記]
なお、「最終教師」ラストで顔八は生死不明であり、ゴキブリらしくしぶとく生き残っていることを暗示するエンドロールになっている。それもまたひとつの含みとして面白い。
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ゴキブリ男と戦うために、自ら天敵である蜘蛛男になった科学者との対決が見物。
なにしろ、「8本足」で「蜘蛛の糸を尻から出す」という「リアリティーに拘ったスパイダーマン」なのです!
Posted by: 名無しさん: 2007年04月15日 08:29>スパイダーマン
狩麻撫礼さんですね。
けっきょく戦いでは彼がいいところ全部もっていって笑いました(笑)
たしかにこれは色っぽいですなぁ
しかしこれ、銀英伝と同時上映だったのですよ。当時はアニメ一緒くたの扱いだったのでしょうか。
http://www2.ttcn.ne.jp/~atsuji-ya/sk-ticket.html
私は漫画版だけ見たことがあるんですが、さすがにそういう深めの読み方をする気にはならない作品だったんで、うーんと唸ってしまいました。
Posted by: yocc: 2007年04月15日 22:31>銀英伝と同時上映
そうらしいですね。
こないだヤフオクで両作品の合わせチラシが出品されてたのを見かけて、へーと思いました。
ギャップがある組み合わせだなあ(笑)
>漫画版
あ、うらやましい。僕は逆に原作だけ未読なので、なんとか入手したいところです。
電子コミックでも販売されてるみたいですが・・・やはり現物が欲しい!(コレクター根性)
主人公は虐げられた者として、権力者の圧政に立ち向かわないといけないんです。最初から権力者として暴虐の限りを尽くすのはエロゲーだけです。
Posted by: Inoue: 2007年04月30日 07:01牙を抜かれた狼などっ!!(笑)
エロゲーの陵辱系は大人向けのヒーロー(アンチヒーロー?)を描きますから、軸が違うってことなんでしょうねぇ。
Posted by: みやも(管理人): 2007年04月30日 07:09