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竹宮先生というと、僕は詳しくないなりにおおよそシリアスな長編作家のイメージだけ勝手に抱いていたんですけれども。
初期にはこういうお軽くて快活なコメディ短編をちょこちょこ描いていたことに感じ入りつつ認識を改めました。
あとがきによると、漫画家として「起承転結の"承"の時期にあたる」ころの作品群だそうな。一人のアーティストが完成へ向う過程でふるいにかけた可能性というのを眺めるのもまた乙なもんです。
テキスト面では、年代が年代だけに平気でぽんぽん「きちがい」等のフレーズが飛び出して小気味よかったりする(笑)
収録作品は以下の8編。
「ブラボー!ラ・ネッシー」1973年
ネス湖近くで暮らしながらネッシーを探し求める変人学者とその息子(天才)、妻(普通人)のドタバタを描いた表題作。
とりとめがないけど、なんとなく良い話を読んだという納得はえられる(笑)
「椿(カメリア)館の三悪人」1975年
イケメン3人組が絶対的モテについて論争中。
いずれも持論を譲らず膠着状態に陥り、それでは次に偶然すれ違った相手を口説いて「貴男を熱烈に愛しています」と言わせた者が勝ちにしよう、という話になる。しかし彼らが出くわしたのは美女ではなく、美しい男の子だった……というお話。
実は女の子でしたとか、そういうヘテロなオチではない。
「ロベルティーノ」1972年
ヴェニスで暮らす貧しい少年が、歌の才能を見出されてスカウトを受け、故郷を離れて生きていく決意へ至る。
何事かをなすために自分の世界を拡げなくてはいけなくて、その直前にささやかな恐れや戸惑いを味わうのは誰しも経験するもんです。それでもなお、やらずにはいられない人間のお話。
「アンドレア」1976年
……えーと、どこまでフィクションなんだろうか。
ウィーン少年合唱団の熱烈なファンである女性漫画家(笑)が、合唱団の寄宿舎を訪問した友人のレポートを読むお話。 ようするに寮モノなんだけどレポート形式ってのはひねりがあって面白いですね。
女人禁制の聖域に集まって暮らす、声変わり直前までの幼い美少年たち、という"向こう側のファンタジー"への憧憬というか情熱というか劣情というか、まあとにかく熱い気持ちがびんびん伝わってくる一編(^^;;
そうかー、少年合唱団ってそういう消費のされ方もあるんだなあ。たぶん基本中の基本なんだろうけど、俺はウブなので新鮮な体験ができた。
……リアルのほうを見る目まで変わってしまうじゃないか!(笑)
「もうっ、きらい!」1972年
中学校を舞台にした学園物。
ボーイッシュが行き過ぎて恋愛に縁がない女の子が、学校のマドンナ的な美少女から熱烈に想いを寄せられて紆余曲折あるお話。
主人公と美少女の仲に割り込もうとしてくるモテ少年の集団が「ハンサム連合」と自称する図がすばらしく恥ずかしい。でもこういうモテエリート集団ってファサードを換えて現代でも使われてる素材じゃないかな。どうだろ。
少年漫画のラブコメではこの手のプレッシャーを機能させる存在は個人がほとんどで、あんまり看板背負った徒党を組むことはないよなーと考えたところで修正。比較するならヤンキー漫画の「地元でケンカ最強の●●四天王」とかそういう類か。
「おヤエさん」1971年
子供嫌いのハウスキーパーとイタズラ好きな坊やを描いたショート漫画。ヤエさんがツンツンしててよろしい。
「ここのつの友情」1971年
アメリカ人の母をもち、金髪碧眼だが日本生まれで日本育ちな少年のかたくなな心が、8つ年上の高校生との交流を通してほぐれていく成長譚。
美点がそのままコンプレックスになっているジョージ君の入り組んだ性格造形がいい感じ。
墨汁で髪を黒く染めようとするエピソードって村枝賢一先生の「光路郎」で使われてたなあ。これが元ネタ?
「ジョージの日曜日」1974年
「ここのつ〜」の後年譚。
中学生になったジョージくんが色気づくお話。