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喪黒福次郎の仕事
著者: 藤子 不二雄(A) 新品 Y 650
喪黒福造のキャラを反転させた善良な弟・福次郎を主役にすえたアイディア一発タイトル。
いまにも危難にさらされようとしている人に目をつけた福次郎氏が、あわやというところで介入して助ける内容だが、かといって素直に心温まる作品というわけでもない。あくまでも「笑うせぇるすまん」の存在を前提として成り立つ本作において、福次郎氏のもたらす救済オチは、読み手にものすごい屈折を与えるからだ。
たとえば第1話は、スナックのママによろめいた男が美人局(つつもたせ)のピンチを免れて家庭に戻る話である。無事に帰ってきた彼を出迎える妻の笑顔で物語が終わるのを目にしたとき、僕の中に渦巻いていた「さあ最後にひとひねり来るかな、来るかな」という無意識の身構えはあっさりいなされた。これがストレートな良い話であることをようやく理解したあとに残ったのは、何ともいえない、もやもやした気まずさだった。それは「笑うせぇるすまん」の文法に照らしあわせてひと味物足りないというもやもや感であり、そして物足りないと思う自分を認識してしまったというもやもや感だ。
分かりやすくいおう。つまり「笑うせぇるすまん」からの地続きで本作を読んでいくと、自動的に「人が不幸にならないことに不満を抱く」というイヤな自分と対面させられてしまう仕組みになっているのである。
劇中の闇をはらうことで、かえって読んでいる人間の腹に黒さを生じせしめ、しかもそれを否応なく認めさせる点で、本作はひじょーにタチが悪い漫画だといえる。