いずみのさんにお借りした同人誌。
あらゐよしひこ氏による、ロメロ版ゾンビに依拠した世界観で描かれたオリジナル漫画です。
■「LIFE OF THE LIVING DEAD」
うはっ、ゾンビハンティングという状況設定だけで原典信仰者はもうニヤニヤですよ。
青臭い退廃観がいい感じです。そういや、あれだけ長大なシリーズであるロメロの三部作ですが、あの終末世界におけるティーンズの心理的様相ってのは実は全然描かれてないんですよね。その意味で、ひじょーに補完的な価値を見いだせる作品ではないでしょうか。
というか、殺伐とした空気の中に儚い情緒をこすりつけるこの語り口は、ロメロ的(あるいはフルチ的)世界をどれだけ拡大延長しても出てこないものです。 まさにあらゐ氏本人があとがきで指摘しているとおり、これだけコアなゾンビ愛好同人作家においてさえ「日本人のはらわたとアメリカ人のはらわたって、何か別のものでできてる」ことを他ならぬ自身の作品によって証明しているように思います。
■「HEART OF THE DEAD」
死者の心理を推定する短編群。思考実験としては好きなんだけど、どのお話も「死人の抱える悲哀(を死人自身が実感できないという悲哀)」で尻を切っちゃってるもんだから、"メメント・モリ"アプローチの本懐である「死から逆照射して生を拾う」ところまで手を伸ばしていないのがちと肌に合わないかも。もちろん好みの問題といえばそれまでなんだけどね(→ボク自身は「ゾンビの出てくる世界の話」は大好きだけどゾンビというイコン自体に愛着はないので)。
■「LINK OF THE DEAD」
前2作の世界観にディテールを継ぎ足して練り直した異編、といったところ。ここまでくると安定感が先に立って立派な"読み物漫画"になっている。
知恵あるゾンビ像の模索といえば「死霊のえじき」のバブ君のエピソードがありましたが、あれ泣けますよね〜……と、筆がどこまでも滑りそうなので止めておこう。
あとがきに関しては、「愛する死人との共存」というトピックを語るなら『ケンタッキー・フライド・ムービー』('77)の「死者の権利を守る会」もレファレンスに加えて欲しかったり。あの寓意に満ちたギャグは「●●権利団体」風刺にとどまらず、生死の相克で戯れるゾンビマニアにも示唆するところの多い傑作だと思います。