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2003年、タイ 108分
監督 プラッチャヤー・ピンゲーオ
武術指導・原案 パンナー・リットグライ
出演 トニー・ジャー
ペットターイ・ウォンカムラオ
プマワーリー・ヨートモガン 他
配給 クロックワークス
ギャガ・ヒューマックス (共同配給)
「モータル・コンバット2」のスタントマン出身で名を上げたアクション俳優としてレイ・パーク
*1
がいますが、同じ作品にやはりスタントで出て「レイ・パークより遙かにすごい」と関係者にささやかれていたトニー・ジャーの初主演作がこの「マッハ!」。盗まれた仏像の首を取り返すため古式ムエタイの戦士が悪党どもと戦うというシンプルなストーリーに、これでもかと豪華絢爛な活劇のエッセンスをぎゅうぎゅう詰め込んだ一大エンターテインメント映画です。
久しぶりに「痛そうに見せる
*2
」格闘シーンの数々を見て、昨今のハリウッドのカンフー&ワイヤーブームで麻痺していた感覚がシャンと覚醒いたしました。
本作は何よりもまず、予想を超えてえらく洗練されている点に大きく驚かされます。
ムエタイという素材から変わり種の第一印象を受け取りがちですが、フォーマットはこれ以上ないほどに正統派なのです。絵面で観客を圧倒するために何をすべきか、きちんと商業娯楽の仁義をわきまえた監督以下スタッフの手腕がうかがえて感動しました。 トニー・ジャーの卓越した身体能力はいうまでもないのですが、それだけに依存せず、きちんと既存のアクション映画群の本道に則った丁寧な作り込みをしているのが素晴らしい。
トゥクトゥク
*3
でのカーチェイスひとつ取っても、確固たる演出技術上の方法論が随所でうかがえて、「これはプロの仕事なのだ」という空気がひしひしと肌に響いてきました。
具体的なところを言うと、やはりジャッキー映画の骨を拾ったところが多くて、「プロジェクトA」「五福星」など"その世代"にはソウル&エモーションをがしがし刺激されること請け合いのシークエンスがてんこ盛りで嬉しすぎます。
そして何よりこのタイトルを単に「すごい」だけではなく「面白い」モノにしているのが、主人公の同郷の友人で愛すべき駄目人間ジョージの存在でしょう。
・強さの対照物
・バディ
*4
としての立ち位置
・コメディリリーフ
・駄目人間の奮起による男泣きな展開
と、もうこれ以上ないほどにフル回転で機能した名サブキャラになっております。
ほとんど演技らしい演技をしないトニー・ジャーが"完璧ムエタイ機械"として黙々と活動するがゆえに生じる表現上の穴を、ジョージがしっかり埋めてくれたからこそ「マッハ!」は血肉の通った作品になったと言えます。ちなみにジョージ役のペットターイ・ウォンカムラオはコメディアン・俳優・TVの司会などで人気を博すマルチタレントなんだとか。その筋のベテランなんですな。
というわけで、貢献度からいって題名は「マッハ!」ではなく「ジョージ!」にすべきだと半ば本気で考え込むみやもでありましたとさ。