『剣豪 その流派と名刀』 牧秀彦 光文社新書
小説、映画、コミック、ゲーム……媒体を問わずお侍さんの出てくるフィクション作品が数あるなか、物語設定を作り込むうえで不可分要素といっても過言ではない「流派」と「刀」に着目し、その有名どころの由来や逸話を概説した一冊です。
まず剣術流派の章では念流、中条流、新陰流、一刀流など剣豪を生み出した室町時代〜戦国を経て江戸時代に加え、維新後に設けられた警視庁流(明治)や夢想神伝流(昭和)まであわせて50流派を取り上げています。なかには中川流や山田流など、様剣術(ためしけんじゅつ)といって、試し切りを専門とする流派なんてのも紹介されていました。
それにしてもこうして時系列順に列挙してみると、流派どうしで人的および技術的な交流(もしくは衝突)がとても活発だったことが分かり面白いですねえ。
また、剣術や芸能などの師弟システムが日本における非血統主義的「家名主義」(=有能なものであれば後継は養子、つまり外の血の混入でも構わない)の土壌に重なって見えて、いろいろ考えどころもありました。
そして、後半は名刀編。
平安時代から江戸時代までのスパンで、大原安綱の「童子切」や青江恒次の「数珠丸」を代表にしたいわゆる天下五剣とよばれるものを筆頭に、新撰組関係でおなじみのノサダや菊一文字などなど、メジャーな50の名刀についてそれぞれの刀鍛冶を軸にして語られています。
合間に余談的に挟まる小さなコラムもちょっとした豆知識で、フィクションで良くネタに使われるミネ打ちや馬上戦法、刀の手入れ(時代劇でよく刀身にポンポンと粉を振っているアレ)などの実際について簡潔にまとめてあり、良い参考になります。
全体的にかなり広く浅くの観があるので恐らくその筋のマニアには食い足らないとは思いますが、僕のような素人が時代モノのサブテキストとして使うには手軽で良い感じです。
追記:
うーん、そういえば西洋ではどうなんだろう??
日本のように「●●●流」なんて看板をアタマに乗せて、戦闘技術をプライベートに体系化して派閥を設け、継承させていく風習ってあるのかなぁ? さらに「ツバメ返し!」みたいに、技に固有名詞を付けるのは?